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無実の始人
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君がいて 九話



生きる理由を失くしたら
私は、どうすればいいの?








追記より「君がいて 九話」です




*********
君がいて 九話
*********







ーピクンッ
私の手に振動が伝わり、私の意識は覚醒した。


眠るときにあった、手の中のぬくもりは今はもうそこにない。

その代りに、ぬくもりは私の頭にあった。
「なのは、おはよ。」




そういって、ぬくもりは私の頭をなでてくれた。




顔をベットからあげると、部屋はもう朱色に染まっていた。
どうやら、ずいぶんと眠っていてしまったらしい。

意識がはっきりしてくると、あのピッピッという無機質な音がないことにも気がついた。
周りをザッと見回すと、眠る前よりかなり部屋は片付いている。

フェイトちゃんにつながれていた医療器具の数々が無くなっていたのだ。
昨日倒れたばかりの患者に対する病院の対応はこんなものなのか?と不思議に思ってしまった。


「なのは、ずっと寝てたんだよ?私、昼頃に起きたんだけど、その時ゆすっても起きないし…
先生や、看護士さんがきても全然起きる気配なくて。」
クスクスと彼女は笑う。

「あ…ゴメン。」






「手…。」
彼女は急にはにかんだ。
「?」
「ずっと握っててくれたんだよね?点滴とかいろんなもの、はずすときに看護士さんに離されちゃったけど。」
手を握ったり、開いたり…その運動をずっと繰り返す。
「ありがと、なのは。」
「うん。」














彼女の意識が戻った。
もちろんそれは喜ぶことである。
彼女が元気なときは、そっとそばにいて笑っていたいし、
いっぱい、いっぱい話したい。



でも、やっぱりこの先のことを考えると不安で仕方ないよ。
寂しくて、悲しくて…私はどうにかなりそうなのだ。
今、話してるこの時があと二週間後にはもうない。

彼女と話している時だけにできる笑顔が、私から消えてしまう。

そして、彼女と共有する幸せも…
私のほとんどすべてが、死に奪われていってしまう気がしてならないのだ。



















また、私は泣いていた。


















「な、なのは、どうしたの?」

私は首を振って「なんでもないの」と示す。

彼女はおろおろしながらも、私の頭をなでてくれた。


「私、もう大丈夫だよ。ね?」



…なんで、そんなバレバレの嘘つくの?
私が昨日眠るまで、あんな数の管につながれていたじゃない。

本当は痛いんでしょ?

辛いんでしょ?

それなら言って?昨日は言ってくれたよね?

私は確かに無力だけど、ずっと側にいて手を繋いであげることができる。
「愛してる」っていって、あなたを幸せな気持ちにできる。


優しい嘘はつかないで。

私が、むなしくだけだから。















「フェイトちゃん…っ。」
私は、彼女の胸に飛び込んだ。


優しいあなたを、近くで感じたい。彼方-あっち-の世界にいかせるのもか。

そう、きつく抱きしめることで訴える。










すると、フェイトちゃんもそっと私を包んでくれた。

私が壊れてしまわぬように…そっと。














(私は、これからも
   この人と
      生きてゆきたい。)









優しく包んでくれるこの人を失いたくない。







思えば、子供の頃からずっとそう思っていた気がする。
お仕事を始めたばかり頃、大ポカをやってしまって、泣いている私の隣にあなたはいてくれた。
何も言わず、暖かい手を繋ぎながら…。











無条件で愛してくれる人。

無条件で愛せる人。

こんな人、きっと人生で一度しか出会えない。



だから、大事に…大切にしたい。





そう、






ずっと









ずっと


















思ってた。



















だけど、あなたがもう、いなくなる。


私の生きる意味が無くなる。


たった19年しか生きてないけど、見つけた生きる理由。


たとえ、それが本物であっても







…失ってしまう時もある。













(本当に大切な優しい人。)












確か、前にあなたは「私の事は忘れて」っていったよね?
やっぱり、それは無理だよ。
あの時言ったとおり、私はあなたを忘れたくない。忘れられるはずがない。













(だって、あなたの存在は、私の存在理由と同意義なんだから。)


























「ねぇ、なのは。」



やわらかな声が、頭の上から降ってくる。

「お腹の赤ちゃんのことなんだけど…」


私は顔を上げて、彼女の顔を覗き込んだ。
視界は、まだぼやけている。



「私、こんな状態だし、先に言っておきたいことがあるんだ。
世の中には絶対なんてないから、もしかしたら明日死んじゃうかもしれない。
だから…ね?」


私は涙を拭った。
まだ、次々と涙は出てくるが、それも全部腕で拭ってやる。




「私の名前って、プロジェクトFからつけられてるでしょ?それでfate。
destinyと違って、悪い意味での運命。」




否定してあげたいが、これはすべて事実。
私一人がどうあがいても、過去は変えれないし、fateの意味をいい意味での運命に変えることなんてできない。



「それで、赤ちゃんの名前…ちょっと考えたんだ。」




フェイトちゃんの視線は、ベットの横に置かれた本に移る。
私の視線も、それを追った。



「姓名判断の本買ったけど、結局参考にならなかったよ…。私も知らない間に、心の中で、もう決めてたんだから。」


フェイトちゃんが熱心にこの本を読んでいた風景を思い出す。
なんだか、私は笑えてしまった。




「な、なのは。笑わないでよ…」
なんて言いながら、彼女は赤くなる。



「にゃはは…。ゴメン、ゴメン。
で?どんな名前?私、フェイトちゃんの決めたのでいいよ。いや、フェイトちゃんが決めたのがいい。」


めんどくさいとか、そんなんじゃない。

心から、彼女に決めて欲しいと願ってる。







ーゴホン
一つ咳払いをして、彼女は空気を締める。



「私が悪い意味での運命なら、この子には美しい希望を…
そういう意味をこめて…」








彼女が言ったのはごくごく普通の名前。






でも私達にとっては、とっても意味のある名前だった。












*************


さぁ、みなさんフェイトさんがつけた名前はなんでしょうか?
べ、別にまだ決めてないとか、そ、そんなんじゃないんだからwww
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COMMENT

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キリル | URL | 2008/07/05(土) 06:42 [EDIT]
あぁ・・・もうここで彼女の死が確定ですのね(泣
赤ちゃんの名前はあらかた予想できますが実際の名前が気になるところです。
こういう死にネタは人の見方によってハッピーエンドとしてもバットエンドとしても取れますからね
むしろ吉野さんが書いているからこそどちらでもないような気もしますけどねぇ・・・
って何だか訳わからん分になってきたぞ?(汗
では乱文失礼~

吉野 | URL | 2008/07/06(日) 19:10 [EDIT]
遅くなって申し訳ございませんm(_ _)m
はい、次で本編はラストのつもりですので…
名前は、たぶん予想通りかもです(´ω`)わかりやすいですよ~。
死ネタは、結構嫌われると思いますが、やっちゃいましたものは仕方ない(テヘ☆  ハッピーエンドとして捉えるか、バッドエンドとして捉えるかは、人の自由ですが、最低限ハッピーエンドとしてみてもらえるようには書きたいです

おぉ、流石キリルさん♪吉野の人間性をよくわかってらっしゃる(´∀`)b努力しないと、方向性を決めれない子なんですww

ではでは~

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